突然のサーバー障害やランサムウェアによるデータ破損など、考えたくはないですが不測の事態はいつ起きるとも限りません。このような事態に備え対策を施すことは、システム管理者の皆さまにとってとても大事なことです。また、バックアップを定期的に実行することで、データ損失やシステム障害が発生した場合、データを復元しシステムを再開することができます。これによりシステムの可用性を確保することができます。今回は転ばぬ先の杖、バックアップについて詳しくご紹介いたします。

システムにおけるバックアップとは

バックアップとは、システム環境において、例えばサーバー、クライアントPCのOSイメージ、設定ファイル、データ、または各種ログファイルなどあらゆるデータを保管しておくために別の場所に複製することを言います。バックアップを取ることで、元のデータが紛失したり破損したりした場合でも、バックアップからデータを復元(リストア)することができます。
バックアップを一次バックアップ、二次バックアップと冗長化する対策の検討も重要となります。サーバーや一次バックアップ先のシステム障害、または災害時等におけるディザスター対策の観点で二次バックアップを取るケースがあります。また、ランサムウェアやサイバー攻撃などの対策として、クラウドを利用したバックアップも有効な手段となります。

バックアップの取り方

バックアップの取り方には以下のような種類があります。

完全バックアップ(フルバックアップ)

選択したすべてのデータをバックアップすることで、最も包括的な方法です。
すべてのデータと設定が保存されますが、バックアップの作成に時間がかかります。
完全バックアップは、データの紛失や損失を防止するために非常に重要です。また、システムの復元が必要な場合には、完全バックアップは必要なデータを含んでいるため、復元が容易になります。
ただし、完全バックアップは時間がかかり、ストレージスペースを多く必要とするため、頻繁に実行するにはコストがかかる場合があります。そのため、増分バックアップや差分バックアップなどのより効率的なバックアップ方法も利用されています。

差分バックアップ(ディファレンシャルバックアップ)

前回の完全バックアップを基準として、それ以降に変更されたデータをバックアップする方法です。
完全バックアップよりも速く、ストレージスペースの節約にも役立ちますが、回復する際に完全バックアップと最新の差分バックアップが必要です。
後ほど記載する増分バックアップと同様に、差分バックアップは大量のデータを扱うシステムで非常に有効です。増分バックアップとの違いは、前回のバックアップ以降に変更されたデータのみをバックアップする点です。このため、復元に必要なバックアップファイル数が増分バックアップよりも少なく、復元にかかる時間が短くなる場合があります。

増分バックアップ(インクリメンタルバックアップ)

前回のバックアップ以降に、追加または変更されたデータのみをバックアップする方法です。
差分バックアップと同様に、ストレージスペースの節約に役立ちますが、回復する際に完全バックアップと複数の増分バックアップが必要です。
増分バックアップは、大量のデータを扱うシステムでは非常に有効です。毎日完全バックアップを行うことは時間とデータ容量が必要となります。増分バックアップを実施することでバックアップに必要なストレージスペースが節約できます。
ただし、増分バックアップには完全バックアップと比べて復元に時間がかかる可能性があります。これは、複数の増分バックアップファイルを順番に復元する必要があるためです。

バックアップの保存先について

バックアップの保存先には、ローカルバックアップ、バックアップサーバーの利用、クラウド上のサービス利用といった保存先があります。

ローカルバックアップ

外付けハードドライブやUSBドライブなど、ローカルストレージにバックアップする方法です。この方法は簡単に実施できますが、ストレージデバイスが故障した場合には、バックアップを復元することができない可能性があります。

バックアップサーバーの利用

ローカルネットワーク内、もしくはWANを利用した別のサイトへのバックアップサーバーに、各サーバーやクライアントのバックアップデータを集約させることができます。この方法はバックアップ専用のサーバーやストレージを構築し遠隔の領域にデータを保存します。バックアップとリストアにはネットワークを利用するためバックアップスケジュールと容量の検討が必要となります。

クラウド上のサービス利用

クラウドストレージやリモートサーバーなど、インターネット上の別の場所にバックアップする方法です。データが暗号化されているかといったセキュリティ上の確認なども考慮する必要があります。

特殊なバックアップ

スナップショット

スナップショットとは、特定の時点でのシステムやアプリケーションの状態を保存することができる機能です。スナップショットを取ると、その時点でのファイルや設定、アプリケーションの状態などが含まれた「イメージ」が作成されます。データが失われた場合には、このイメージを利用しデータを復元することができます。

ミラーリング

データを2つ以上のストレージデバイスに同じようにコピーします。一般的に、ミラーリングは冗長性を確保するために行われます。例えば、企業や組織が重要なデータを保管するために、1つのストレージデバイスにコピーを保存するだけでなく、別のストレージデバイスにも同じデータを保存することがあります。これにより、1つのストレージデバイスが故障した場合でも、もう1つのストレージデバイスからデータを復旧することができます。
ミラーリングによるデータのコピーは、リアルタイムで行われる場合と、一定時間ごとに自動的に行われる場合があります。リアルタイムで行われる場合は、1つのストレージデバイスにデータを書き込むと、同時にもう1つのストレージデバイスにもデータが書き込まれます。一定時間ごとに自動的に行われる場合は、一定の間隔で1つのストレージデバイスからもう1つのストレージデバイスにデータをコピーします。

まとめ

バックアップについて、種類や方法について記載しました。会社等のルールや扱うデータの種類、緊急性、利便性によって適した方法を選択することをお勧めします。また、今後いつ発生するとも分からない災害や事故に備え、BCP(Business Continuity Plan)対策としてバックアップを見直すことを検討してはいかがでしょうか。