今回は、DDS も多要素認証のひとつの要素として採用する顔認証について取り上げます。
まずはその歴史から紐解いていきましょう。
顔認証の歴史
顔認証は 1964年、東西冷戦のさなかに始まったと言われています。機械を利用した顔認証で、顔の 20 個の特徴を手動で入力していたと言います。これは精度に限界があり、また当時の技術では開発が追い付かずしばらくは止まっていましたが、1973年に自動で顔を認証する研究が本格的に始まり、1988年くらいには現在の顔認証システムの基盤となる統計的な手法を用いた顔認証が始まりました。
1993年には、アメリカで顔認証のベンチマークテストが始まりました。
大きな転機を迎えたのが、2001年のアメリカ同時多発テロ。ここから急速に進化します。テロ防止のため空港での導入が始まり、この頃から顔認証が一般に浸透し始め、顔写真を入れた電子パスポートも普及しました。
その後、デジカメ(顔検出)、携帯電話、入場ゲートシステムなど様々な用途で使用されるようになり、現在では、身分証明、アクセス制御、入退場、出退勤管理、eKYC※、公共機関など、多岐にわたる分野で利用されており、今後もその普及が期待されています。
※ eKYC(イー・ケーワイシー):銀行口座開設やクレジットカード発行などにおける身元確認をオンラインで実施する本人確認手続きのこと。electronic Know Your Customer の略。
顔認証の技術
顔認証は、顔の特徴点を抽出して、事前に登録された個人情報と照合する生体認証技術であり、人間の顔の固有の特徴を利用して識別を行います。
顔認証技術は、その高い利便性とセキュリティの向上により、前述のとおり様々な分野で利用されています。
顔認証の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
- 非接触で認証できる
顔認証は、認証するユーザーの手を煩わせることなく、非接触で認証できるというメリットがあります。新型コロナウイルス感染症の流行を背景に、非接触型の認証技術への需要が高まっていることもあり、注目を集めています。 - 利便性が高い
顔認証は、IC カードやパスワードなどの認証方法と比較して、利便性が高いというメリットがあります。IC カードやパスワードを忘れた場合でも、顔認証であれば認証できるため、手間がかかりません。 - 導入コストが比較的低い
顔認証は、他の生体認証技術と比較して、導入コストが比較的低いというメリットがあります。これは、エンタープライズで利用される PC 上での顔認証では備え付けのウェブカメラで可能であるなど、比較的シンプルな構成で実現できるためです。
顔認証の用途
日本で見られる顔認証製品の性能は、年々向上しています。特に、認証精度の向上が著しく、誤認率が低い製品が多くなっています。また、顔認証の利用用途も拡大しており、以下のような用途で利用されています。
- 入退出管理
顔認証は、オフィスや工場、学校、施設などへの入退出管理に利用されています。顔認証ゲートを設置することで、従業員や来訪者の入退出を自動的に管理することができます。 - 本人確認
顔認証は、本人確認にも利用されています。エンタープライズ環境ではPCにおける多要素認証の一要素として利用されます。また、マイナ保険証では、マイナンバーカードのデータと顔を照合することで本人確認をしています。 - 決済
顔認証は、決済にも利用されています。顔認証決済サービスでは、顔認証で本人確認を行い、決済を完了することができます。
顔認証は、利便性や導入コストの低さなどのメリットから、今後もさまざまな分野で利用が拡大していくことが予想されます。
しかしながら、顔認証技術には、以下のような課題があります。
顔認証の課題と対策
- 認証精度
認証精度が低いと、運用に濃淡が生じてしまい逆にコストがかかることになります。周囲の明暗や顔の向きなどの撮影環境の違いによる認識精度の低下、メガネやマスク着用時の認識精度の低下などがあります。 - なりすまし
他人の顔写真などを使って本人認証を突破されるおそれがあります。 - 個人情報の取り扱いやプライバシー問題
顔の情報は個人を特定する個人情報です。偽造できない本人の顔情報を利用するため、変更のできるパスワードと比較して流出リスクが大きくなります。
このような課題に対して、以下のような対策を取ることができます。
- 認証精度
運用に濃淡が生じるリスクを回避するためには、使いやすさを考えつつ、認証精度の高いものを選択することが重要です。なるべく環境に左右されにくい、メガネやマスク着用時の認証も可能かなどを見ることも大切です。 - なりすまし防止、他の認証技術を併用してセキュリティ強化
写真をカメラにかざしても認証しないなりすまし防止機能を備えた製品もあります。また、顔認証だけではなく、他の認証要素と組み合わせてセキュリティを向上することもひとつの方法です。パスワードや IC カードを組み合わせた多要素認証がこれに当たります。 - 暗号化と個人の同意などの運用で対応
顔情報は暗号化されている必要があります。運用側が管理方法を予め決め、利用する本人の同意を得てからシステムを利用させることも必要です。
以上のように、顔認証技術は、高い精度を実現することで、多岐にわたる分野で利用されています。しかし、セキュリティ上のリスクもあるため、適切な対策と運用が必要です。
DDS では、エンタープライズ向けの多要素認証ソリューションで、自社の顔認証技術を採用した軽快顔認証、パナソニックコネクト社製の顔認証Next を展開しています。メガネやマスク着用時の認証を可能とするとともに、軽快顔認証では、なりすまし防止技術を採用し、顔写真を本人確認のなりすましを防止する機能を採用しています。
PC での本人確認を安全に運用いただくためにも、DDS の多要素認証ソリューションを検討してみてはいかがでしょうか。
参照先
朝日新聞×駿台予備学校『知の広場』リレーゼミ:朝日新聞デジタル (asahi.com)
社会を変革した顔認証の歴史と進化|顔認証技術の活用事例も紹介 | コラム | JCV – 日本コンピュータビジョン株式会社 (japancv.co.jp)
顔認証の技術の歴史 – Saffe | 世界トップレベルの顔認証技術を低コストで
※記載の製品名は、各社の商標または登録商標です。