マイクロソフトは 2015年に Windows 10 を「Windows 最後のバージョン」として発表を行いました。しかし、その後継 OS であるWindows 11 を 2021 年 10 月 5 日にリリースしてから約2年が経過します。この間に Windows 10 から Windows 11 へアップグレードされた方や、はじめから Windows 11 を利用されている方も多いかと思います。そんな中でも、Windows 10 から Windows 11 ヘ移行するかどうか迷っている方も多いのではないでしょうか。
今回は Windows 11 が登場した背景、利用するメリット、Windows 10 を利用し続けた場合に発生するリスクについて見ていきたいと思います。
Windows 11 が登場した大きな理由は、コロナ禍などもあり、人々の働き方やそれに伴うセキュリティに変化が生じたことではないかと考えられます。このため、セキュリティの強化やユーザーエクスペリエンスの改善などが主な変更点となっています。
Windows 11 のメリット
Windows 11 では Windows 10 と比較し、下記のようなメリットが挙げられます。
セキュリティの強化
Windows 11 の1つ目のメリットはセキュリティが強化されたことです。Windows 10 では初期状態で有効となっていなかったセキュリティが、Windows 11 では標準で提供されています。主な強化内容は「コア分離」、「セキュリティ プロセッサ」、「セキュアブート」などです。これらのセキュリティ機能ではどのような保護が行われているのでしょうか。
コア分離
コア分離は、以下 2つの主な機能で構成されています。
① メモリの分離
デバイスのメモリを保護するための仕組みを提供し、マルウェアや悪意のあるソフトウェアがシステムのメモリにアクセスできるのを防ぎます。
② ハードウェアセキュリティ機能の活用
CPU の仮想化技術やメモリ保護機能などハードウェアのセキュリティ機能を活用することで、堅牢なセキュリティを提供します。
セキュリティプロセッサ
Windows 11 では TPM 2.0 が必須となっており、搭載していない PC では Windows 11 が利用できません。TPM(トラステッド プラットフォーム モジュール)とは、BitLocker ドライブ暗号化、Windows Hello、その他のサービスによって使用され、暗号化キーを安全に作成して保存しておくチップです。TPM 2.0 は従来の TPM1.2 と比較しセキュリティが強化されています。
セキュアブート
Windows 11 ではセキュアブートが必須となっています。セキュアブートとは PC のマザーボードに搭載される機能で、PC の起動時に実行されるすべてのコードをチェックし、安全かチェックを行うセキュリティ機能です。これにより、システムのセキュリティが向上し、悪意のあるソフトウェアからの保護が強化されます。
また、Windows 11 は古い CPU の制約を設け、セキュリティの強化を行っています。2017 年まで製造された CPU にはセキュリティ上の脆弱性が発見されており、この脆弱性を狙ったウイルスの攻撃は、ウェブを介してパソコンの権限を奪うなど、危険なものでした。CPU を安全な状態にすることにより、安全性と処理速度向上を実現しています。
Windows 11 のユーザーエクスペリエンスの向上
Windows 11 の 2 つ目のメリットは、ユーザーエクスペリエンスの向上です。
Windows スタートメニューのタスクバーの位置の変更
Windows 10 との大きなデザインの違いは、Windows スタートメニューの位置です。Windows 10 では左端に配置されていましたが、Windows 11 では中央に配置されます。クリックするとウィンドウでピン留めしたアプリケーションなどが表示されます。Windows 10 の操作性に慣れており、使いづらいといった意見も聞かれます。そんな場合、スタートボタンの位置は変更可能なので、従来と同じ左端に設定することも可能です。
ウィンドウの配置と最大化
Windows 11 では、ウィンドウの最大化ボタンを見つけやすくするため、ウィンドウの最大化 / 最小化ボタンが各ウィンドウの右上隅に移動されています。Windows 10 では左上隅をクリックすると表示されるメニューがありましたが、これが削除されています。左上隅のダブルクリックでもウィンドウを閉じることができたので少し残念です。
スナップレイアウト
スナップ レイアウトとは、Windows 11 で追加された機能で、複数のアプリケーションウィンドウを簡単に整理して配置することができる機能です。これを利用することで、マルチタスクの際、作業スペースをより効果的に活用できます。ウィンドウの最大化ボタンの上にマウスを置くか、Win + Z キーを押すことで利用できます。
ウィジェット
Windows 11 には新しくウィジェット機能が搭載され、アプリケーションを起動したり、Web サイトにアクセスしたりしなくても、天気やニュースなどの情報を確認することができます。Windows 10 でいう「ニュースと関心事項」にあたります。ウィジェットでは天気予報、おすすめ、ニュース、株価、イベント、交通情報などが表示されますが、不要な情報の削除や、必要な情報の表示などカスタマイズが可能です。
Windows 10 を使い続けるリスク
Windows 10 は、最終版となる 22H2 のサポート期限が 2025 年 10 月 14 日に終了予定であると、マイクロソフトから発表されています。
プログラムの更新が実施されていなければ、Windows 10 でもバージョンによっては既にサポート期限が終了となっているものもあります。サポート期限切れでも、引き続き Windows 10 は利用可能ですが、セキュリティに関するリスクが高まることになります。
- プログラムの更新を行わない場合は以下のリスクが生じます。
- 問題が発生しても、マイクロソフトの公式サポートを受けることができなくなります。
- OS に不具合が発生しても改善されないため、注意が必要です。
- システムに欠陥が見つかったとしてもセキュリティパッチが提供されず対策がされないため、ウイルスやマルウェアなどに感染するなど、脆弱性が高まります。
- 新しい機能が追加されないため、一部のアプリケーションが正常に動作しなくなる可能性があります。
- 周辺機器などサポートされなくなるため、利用できなくなる可能性があります。
まとめ
従来であれば新しいバージョンの Windows へアップグレードする場合、無償でアップグレードできる期間がありましたが、基本的にアップグレード用のディスクを購入したり、シリアルキーを購入してダウンロードしたりする必要がありました。しかし、Windows 10 から Windows 11 へのアップグレードには費用がかかりません。環境が許せば、Windows 11 へのアップグレードを検討してみてはいかがでしょうか。
参照
https://www.microsoft.com/ja-jp/biz/smb/column-enhanced-security-for-windows-11.aspx
https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/apps/desktop/modernize/apply-snap-layout-menu
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